インフルエンザと終わらない演劇
- team chiipro
- Jan 23, 2018
- 4 min read
Updated: Mar 1, 2018
こんにちは、中馬です。
今週はインフルエンザにやられ、稽古をお休みしてしまいました。
幸い微熱程度で収まりましたが、インフル検査で鼻の奥をえぐられるのが辛かった……。
休みの日はあっという間だけど、休まざるを得ないときは長いものです。皆さんもお大事に。
そうそう、長いといえば、3月のカクメ・イカ・クメイ展(以下、カクメイ展)は上演時間が9時間もあるんです。カクメイ展だけじゃなくて、ちょうど僕が初めて出演した「Let’s Dance?」も9時間連続上演でした。演出が手応えを感じたらしく、「この連続上演スタイルは、しばらくチープロの基軸になる」と考えているそうです。おかげで九州の両親からは「ちーぷろって劇団は大丈夫なのかい?」と電話で心配されました。ブラック的な意味で。
母さん、ちゃんと休憩が取れるようになってるから大丈夫だよ。
ってわけで、稽古を休む埋め合わせにはならんけど、今日は長時間上演の見方について、ちょっと考えてみます。

長時間上演第一弾「Let’s Dance?」のときは「9時間緊張するからだ」と銘打って、俳優の身体に注目していました。疲れたり、飽きたりといった生理的な観点も含めて、9時間のパフォーマンスのなかで俳優がどう変わっていくか、心身に何が起きるのか、みたいな視点で始まったんですね。(この時点ではたしかに、ちょっとブラックな着想です笑)
ただ「Let’s Dance?」の稽古の中で、さらに本番でのお客さんの反応を受け取っていく中で、「長時間上演」の意義がだんだんはっきり見えてきました。
それは「ずっとやってる演劇」とは「終わらない演劇」だということです。
始めと終わりで括られた「ストーリー」というのは、俳優の振る舞いをコントロールするだけじゃなくて、実は見ているお客さんにも、制限をかけるところがあります。
たとえば、単純に2時間じっと座ってなきゃいけないとか。「今1時間半たったから、そろそろ終わりだな」とか。サスペンスでいうと最初の30分で疑われる人物って、まあ犯人じゃないよね。とか。泣けるシーンで、はいおしまい。とか。
演じる方もみる方も、そういう感覚から一旦自由になれないものか、という実験方法の一つとして、ずーっとやってるわけですね。9時間たてばもちろん終わるんですけど、パフォーマンスがキリや収まりの良いところでオチたりしないってことです。定時だから、ただ「やめる」だけ。見始めて10分のお客さんと、3時間見てるお客さんが一緒の空間にいるわけです。だからみんな気分は違うし、クライマックスはありません。
代わりに、滞在中のお客さんには、ちょっと大きめの自由があります。

歩き回ってもいいし、ドリンク飲みながら読書してもいい、スマホで写真をとってもいい。(会場で売ってるレモネード、素材にこだわっていて美味しそうでした。)
役者と一緒に踊ってもいいし、演出家をひっ捕まえて質問攻めにしてもいい。友だちと話してもいいし、隣り合った知らない人に声をかけてみるのもいいと思います。
色んな過ごし方がありますから、自分にとって一番気楽な観劇の仕方で、見てほしいです。
お客さんにも「終わり」はないので、ほんとに好きなタイミングで、見るのを「やめて」ください。
でも、僕からの個人的なおすすめです。
ぜひ、1時間くらいはのんびりしていってください。
どんなスタンスで劇を見たとしても、そのくらいいると何となく空間や俳優が身近なものになって、だんだん気が抜けてくると思うんです。そういうときって、晩御飯何食べるかとか、朝見たニュースとか、明日の仕事のこととか、昔の友だちのこととか、ふっと思い出すことがある。そんな気分になったら、時々ぽけっと僕らを眺めてくれればいいと思います。

疲れたら、真面目に見なくていいんです。好きな時に笑って好きな時に泣いて、好きな時に帰ってください。時間は無限にありますから。
眠いような眠くないような時間、ぐるぐるぐるぐると記憶とアイデアの欠片が浮かんでは消える浮遊感。
そう、インフルエンザで横になってる今日のように……。
てな感覚を提供できたらいいんじゃないかな。と思ってます。
現在の体温、36.3℃。
中馬でした。
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「20世紀プロジェクトvol.3: カクメ・イカ・クメイ展」
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