突然ですが。
「チープロ」で検索すると、最上位に出るのは「NPO法人チーズプロフェッショナル協会」。気になるな、そっちのチープロ。
はじめまして。中馬です。読み方は「ちゅうまん」です。最近チーム・チープロに客演している、半端物の演劇マンです。普段は「ざ・えんど」という遠距離バンドを組んでいたり、「シンプルな羊」というコント演劇トリオに携わっていたりします。チープロには、昨年の「20世紀プロジェクト:Let’s Dance?」から、続けて出演しています。
さて、今回の「カクメ・イカ・クメイ展」の本番に向けて、僕が中心になって稽古日誌を付けることになりました。客演だけど3回目の参加という、ホストとゲストの中間くらいの視点から、お客さんと作品の関心を繋ぐヒントが見えてくるかもしれないな、そしたらラッキーだね、という期待から始まりました。このなんだか前衛的で、ときに無機的にも見えてきたチーム・チープロの、意外と人懐っこいところを探していこうと思います。
前置きが長くなりました。
年が明けてすぐの稽古を振り返ります。今回の作品では、ちょっと変わった稽古の仕方をしています。「カクメ・イカ・クメイ展」には脚本=ストーリーがありません。だから舞台で何が起きるのか(何も起きないのか)、俳優がどんな振る舞いをして、どんな言葉を口にするのか、全てゼロから考えていきます。この日は、俳優に1冊ずつマヤコフスキーの著作(詩集・戯曲など)が手渡されました。「その本の中から、俳優が関心を惹かれた文章を自由に選んで発語してください、それに自由に動きを付けて『日常』を表現してみて」というのが演出からの「お題」で、30分ごとに僕たちは「回答」を提出していきます。
……無茶ぶりでしょ?
「マヤコフスキー」「日常」「自由」じゃ三題噺にもならないですからね。当然僕は「いやいや、もうちょっとちゃんと指示くださいよ」と抗議しました。そしたら演出は「君が面白いことをやったら、指示をあげるよ」と言うのです。禅問答?……と困惑する僕を尻目に、さすがチープロの看板女優二人は回答を出しました。
その記録がこちらです。
回っている。そして跳んでいる。笑いながら。二人の笑顔を見て、僕は思いました。こまけーこたぁいいんだな。無邪気に遊べばいいんだな。で、思いきってやってみました。
面白いとは言いませんが……勢いがあって楽しそうですね。細かな言葉の意味などは考えず、ただ自分が演じて気持ちいいようにと、振り切ったパフォーマンスをしてみました。
こういった演技の一つ一つが、本番で実際に取り入れられるかはまた別の話ですが、「おっ」「イイじゃん」と思える瞬間をたくさん作ってみるのが、この稽古の肝なんじゃないかな。そのイイ感じの瞬間を見つけたら、その演技がなんで「イイ」のかを、今度は脳味噌の方をフル活用して、みんなで考えていきます。「イイ」と感じるのにも必ず理由があって、
作品のテーマに通じた表現であるはずだからです。演出がそこに「なぜ今のがイイのか」という仮説を立てて、テーマに即した「イイ」時間を生み出すための新しい実験方法をまた考える。
それが最終的には、9時間のパフォーマンスの土台となる、「ルール」に収斂していきます
※「ルール」…中馬はストーリー演劇における「戯曲」にあたる部分だと理解しています。
※「ルール」はチーム・チープロ演劇の根幹なので、またじっくり取り上げますね。
まずは演出のアイデアや指示(無茶ぶり)が火種になり。それに応えるべく俳優が頭をひねったり体をねじったりして火を大きくして。火の色を見た演出が、キャンプファイアにくべるか、バーベキューするか考えて、また火を育てる。
そんなサイクルで実験を繰り返すのが、チーム・チープロの稽古場です。毎回の稽古で何が起きるかは、誰にも分からない。その点では、俳優も演出家も稽古場では観客と何も変わらないのです。だから僕らが稽古場で「楽しい」と思えた瞬間が多いほど、きっとお客さんも演劇を楽しめる。王道であっても、アバンギャルドであっても。チープロの、そーいう当たり前のことを思い出せるとこ、僕は結構好きですね。
つづくつづ
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「20世紀プロジェクトvol.3: カクメ・イカ・クメイ展」
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